先輩上司に教わったこと
「私が上司から教わったこと」
私が最近会社を作ったということを先週の編集後記でちょこっと書きました。
そこで最近働いてもらっている20歳の谷田君という男の子がいます。
彼は社会人経験が全くなく、敬語の使い方も全然。
まあ、ぶっちゃけ新卒の新入社員と比較してもありえないレベルです。
そのため、行動の一つ一つが発展途上ということもあり、
全てを一から教えなければいけません。
谷田君と一緒に法人営業を回っていたときの一幕を見てみるとこんな感じです。
◆私
「よし、じゃあ、谷田君そろそろ一人で営業いってみっかヨ」
◆谷田君
「はい」(沈痛な面持ちで)
◆谷田君
ガラッ
「こ、こんにちは。い、い、維新NETです。ほ、本日は。。ええっと。。その。」
◆お客さん
「間に合ってますので」(瞬殺)
◆谷田君
(がっくり。。)
◆私
。。。
このように二人で営業を回っていたのですが、緊張と経験不足のこともあり、
横で聞いていても、何をしゃべっているのか私自身がよく分かりません。
いや〜こりゃ、厳しいなあと思っていましたが、
私も創業期の経営者の端くれ。そうそう彼ばっかりに構ってられません。
一通り教えたら、ビジネスパートナーに預けて一緒に回ってもらってました。
ちなみに営業自体はそれほど難しいものではなく、私でいえば、
午後だけ営業に出て、10契約くらい取れる程度の簡単なものです。
ただ、社会人経験がほとんどない彼にとっては、とても高いハードル
だったと思います。
◆私のビジネスパートナーで取締役の小林さん
(知識、見識共に優秀で、前職で大手コンサルティング会社に在籍。
そこで、トップ営業マンの実績を買われ、マーケティング
マネージャーを歴任した45歳の男性)
「いや〜川島君。彼厳しいな。。正直期待できないと思う。
創業期の今、彼の研修に終始していると経営効率も悪いし、
育てている暇があったら俺らが契約をとらないとキャッシュフローが
まわっていかないのは社長の君自身が一番良く分かってるはずだ。」
◆私
「分かってます。。」
理屈では彼の言っていることは正論。
しかし、私の中ではそこまでビジネスライクに割り切れない何かがありました。
それは、以前私が勤めていたコンサルティング会社で会社を辞める日
先輩上司にもらったメールがずっと頭に残っていたからです。
それはこのような内容でした。
以下に引用しているメールは私がその上司に退社の挨拶として
送ったメールに対する返信としてもらったものです。
(ほぼ原文を引用)
「川島君へ
ご苦労様でした。
川島君は面白かったし、何よりもくじけない人間でした
ので、非常に俺も楽しかったです。
残念です・・・
が、短い期間かも知れませんが、仲間です。
最近、一度出会った人は大切にしないといけない
と本当によく思います。
結局は長い目で見ると、そういった信頼関係で結ばれた
人間関係が何人いるかで人の幸せなんて決まるとしみじみ
と思います。(おっさくさいな・・(笑)
だから、今度は上司と部下ではなく、色々な人生の壮大なプラン
についてでも酒でも飲んで話し合いましょう。
また、いつでも困ったことがあったら連絡してな。困らなくても
たまには、元気ですぐらいで連絡をちょうだい。
というわけで本当にありがとう
また、次のステージで活躍してくれることを心から祈っています。
最後になりますが、一つだけお願いです
僕はぼんくら出身で、将来の可能性をつぶす大人を非常に嫌いに思っています。
どんな奴の将来にも明日はあるのに、今の業績や能力だけを見て判断をしている
人があまりにも多いのではないかと悲しく思うことが多かったです。
ですので、川島君も、部下や後輩ができ、育てる立場の人間になったら
同じようにしてくれ、どうしようもない人が川島君のおかげで素晴らしい人間に
なったら、本当に嬉しく思います。
気が向いたらでいいから考えてみてください。お願いします。
では体には気をつけて、頑張ってください。
次の人生が決まったらまた、連絡してね
よろしくお願いいたします
本当にありがとうございました」
(ほぼ原文のまま引用)
退社の準備のため、身辺整理をしていた私の周りには同僚が座って仕事を
していました。
私はゆっくり立ち上がり、トイレに入りました。
目を真っ赤に腫らしたブサイクな自分が鏡に映っていました。
営業3日目終了。
谷田君は今日も坊主。
これで営業初日から連続3日間1件の契約もとれていません。
このままではまずい。。
資本金が潤沢にあるはずもなく、焦りがつのっていました。
小林さんの言うとおりなんだろうか。。
その夜、私は上司からもらって何度も何度も読み返し、
ボロボロになったメールのプリントアウトをもう一度読み返しました。
それから、小林さんに次のようなメールを送りました。
「お疲れ様です。
谷田君の成績についてですが、小林さんの言うことが正論です。
それを踏まえてお願いがあります。
確かに彼は契約が取れていません。しかし、ガッツがあります。
以前の僕と同じです。
だから僕は彼をあきらめたくないし、何より人を切り捨てるような
マネジメントは創業期の今だからこそ逆にやりたくない。
一度それをやってしまったら、それが基準になってしまいそうな
気がするからです。
もうしばらく長い目で見てやっていただけないでしょうか。」
小林さんからの返事は
「出資者の君が言う以上は可も不可もない」
ということでした。
次の日は休日でした。
私は彼を連れ出し、営業に回りました。
そして気がついたことを彼に伝え、少しづつ改善させようとしました。
ただし、叱らないように。絶対に叱らないように。
「お前ならできる。一番頑張ってるんだから。お前ならできるから。」
呪文のように唱え続けました。
それは彼に向けた言葉であり、私自身への祈りでした。
それは、私自身がろくでなしのできないサラリーマンだった時代、
人を最も動機付けする一番の特効薬を私が知っていたからです。
人を最も動機付けるもの。
それは
お金でも脅しでもなく、
ただ相手を信頼することです。
これはディール・カーネギーが言っています。
私はそれを身をもって上司に教えてもらいました。
しかし、それには我慢と忍耐が必要です。
本当にそれが今身にしみて分かります。
私の上司は私を見捨てませんでした。
今の谷田君はあのときの私です。
「今を逃したら、上司への恩返しの機会は二度と訪れない。」
何の根拠もありませんが、なぜかそう思いました。
その日の営業も彼はボウズ。
これで4日連続でした。
「俺には、もう。。無理です。。」
彼が私にそう言った日。
その日は雲ひとつ無い抜けるような晴天の日でした。